ペースメーカー外来
ペースメーカー外来
心臓は4つの部屋(左心房、右心房、左心室、右心室)からなり、電気信号によって全身に血液を送り出すポンプ機能を担っています。洞結節(どうけっせつ)というところから電気信号を発生し、右心房を通って房室結節(ぼうしつけっせつ)という場所に伝わることで心室が収縮を行います。脈が病的に遅くなる「徐脈(じょみゃく)」は、この収縮にかかわる「洞結節」と「房室結節」に異常が起こることが原因と考えられています。
洞結節の疾患である洞不全症候群は、右心房の洞結節の細胞に異常が生じて、心臓を動かす電気の発生回数が極端に減少したり、発生できなくなったりします。
房室結節の異常には房室ブロックがあります。洞結節で発生した電気は心房を収縮させると、房室結節を経由して、次に心室を収縮させます。この房室結節の細胞が何らかの異常を起こし、電気信号が心室にうまく伝わらなくなった状態が房室ブロックです。
これらの徐脈性不整脈では、心臓の筋肉に人工的な電気信号の刺激を与えて、心収縮を発生させる必要があります。ペースメーカーは、この目的を達成するために用いられる医療機器です。
電気パルスを発生させるペースメーカー本体は小さな金属製で、リチウム電池と電気回路が内蔵されており、重さは20g前後です。継続的に心臓の動きをモニターし、遅い脈拍(徐脈)を検知したら、微弱な電気刺激を送って正常な脈拍に戻します。
ペースメーカーの手術は、基本的に左右いずれかの鎖骨下の前胸部分を、4~5センチ程度切開し、皮膚と筋肉の間に埋め込みます。リードと呼ばれる電線は、血管を通して心臓内(右心房と右心室)に留置します。多くの場合、局所麻酔にて施行可能ですが、場合により全身麻酔下で行うこともあります。
リードを必要とせず、小さな電池本体のみでペースメーカーの機能を持つリードレスペースメーカーもあります。このデバイスは、本体は皮下に埋め込むのではなく、カテーテルを用いて直接心臓内に留置します。
徐脈性不整脈は、脳や他の臓器へ送られる血液の量が減り、息切れ・めまい・眼前暗黒感(目の前が暗くなる感覚)・意識消失などの症状を引き起こします。
徐脈は加齢や動脈硬化が進んでいる方に起こりやすいと言われています。その他に虚血性心疾患、高血圧症、先天性心疾患、心筋症なども原因として挙げられます。慢性腎機能障害による電解質異常や甲状腺疾患、高血圧治療薬や精神疾患治療薬などの薬剤によって起こることもあります。徐脈はすぐに命に関わることは少ないため、重大な自覚症状がなければ経過観察となります。ペースメーカーによる治療が検討されるケースは次のような場合です。
ペースメーカーは心臓の働きに関わる精密機器であるため、定期的にしっかり点検する必要があります。当院では、脈が遅くなる徐脈性不整脈(洞機能不全症候群、房室ブロック、徐脈性心房細動など)の治療でペースメーカーを埋め込んだ患者様に半年ごとの定期点検を行っています。点検は専用の機械を体表面に当てて行うもので、身体への負担はほとんどありません。
点検内容は、ペースメーカーの動作確認、電池残量の確認(5~10年に1回程度の電池交換が必要になります)、リード線の異常の有無、不整脈や心不全の状況確認などを行います。必要に応じてプログラムを微調整し、本体の交換が必要であれば入院予約をします。
点検前には心電図や胸部レントゲン検査を行い全身の状態も診療します。
定期的なチェック以外にも、めまいや動悸など、気になる症状があった場合には、念のためペースメーカーのチェックをお勧めします。お気軽にご相談ください。